……それは虚空に向けた呟きのように
意識と無意識の境界をたゆたう曲線……
ヴェトナムとカンボジアの国境、霧深き熱帯雨林の地にてかつて用いられたという ――「チャム文字(アカン・チャム)」である。
史書によれば、部族内で行われた「シャミセン=フラ」なる降霊の儀式において、神官が焼酎を飲み、直径1mほどのリングを腰で回転させる事で一種のトランス状態に没入し、本命と対抗を予言したという。
神託を伝える者の責務は重大であった。予言が外れた場合、彼は「アカン、チャム」と絶叫しつつ祭壇から引きずり降ろされ、フランス人騎手の背信を嘆いたという。